私の母は、ぽちゃっとしている、いわば小太り体系だ。物ごころついたころから、すでに母の体系はむちっとしていたと思う。家庭内で、私と父はやせ形で、母と弟がぽっちゃり体系だ。
母は自分が小太りだということを気にしているらしく、よくダイエット宣言をする。「いついつまでに10キロやせるぞ!」とか「今度は本気だから!」と聞いてもいないのに、私と父に誓いを立てる。その度に決まって、ダイエット本を何冊も購入し、テレビ通販で見たらしいダイエット器具が家に増えてくる。
そうして何カ月か過ぎた頃、私はいつも「ちょっとは痩せた?」と聞く。そんな時「まぁそこそこね!」と全く数か月前と変わらぬ姿の母があっけらかんと答える。さらに数か月、ダイエット器具と本が部屋の隅に追いやられはじめたころ、きまって母は「今回のダイエット期間は終わりになりました!」とまた聞いてもいないのに、終了宣言を私と父にする。
私が「もう何回目のダイエット期間なのよ」とチクリというと、横から父が「まぁまぁ母さんも頑張っているんだから」と母を甘やかす。父がそんなんだから母はダイエットに本気になれないのではないかと心の奥で思いつつ、その気持ちはそっと胸にしまっておく。
そんなこんなで年月が過ぎ、今年もまた納戸で眠る寂しそうなダイエット器具をしり目に、母は新しいダイエット本と器具を買いだした。
「今年は本気でやせるぞ!」
もう何度目かわからなくなった母のダイエット宣言も、わが家の風物詩となった。